オリンピックに活力を! 2016.2.27開会の辞 大脇 準一郎

 今日このようなフォーラムの開催に、私が再び携われるようになった経緯と、そのことに対
する御礼の気持ちを、皆様にお伝えすることをもって、 開会のご挨拶に代えさせていただき
ます。
 実は、私事ではありますが、小生、相当重症の糖尿病でした。このことが判明したのは、全くの
偶然で、今日ご出席の小松社長が私を松江に40日間、ご招待下さり、その機会に検査を受けた
お蔭です。 その後、その数値が6.5に下がり、今では活力と意欲が漲っています。

 次に、このフォーラムの共同主催者である市河会長に対する御礼の気持ちです。市河会長は
15歳の時、長崎で被爆、明治大学夜学に通いながら苦学され、85歳の現在、30のビル、
100億円の資産を築きあげられ、今も現役でご活躍されています。予科練生の生き残りである
会長は、「金儲けは手段であって、世の中の為に使うべきだ」と常々おっしゃり、今日の会合の
スポンサーを快諾くださっております。
 「自分が今も元気なのは創価学会の生命哲学のお蔭だ」と市河会長はよくおっしゃっています。
 生命とは何か?「盲目的な意思である」とすればニヒリズムに陥り、生存競争の修羅場に入り
込んでしまいます。最近, A. アインシュタインの娘リーゼルに宛てた手紙を目にしました。
彼によれば、宇宙は互いに連関性を持った一大有機体であり、目的性を持っている。そして
「この生命に意味を与えるのが愛である。宇宙の根源は愛の力である」言っています。
 
 三つ目は、今日も司会を引き受けてくださっている井関利明先生に対するお礼の気持ち
です。 先生は、長年マーケティング学会の会長として数々の流行語を生みだされました。
また慶応大学藤沢キャンパス構想を立案され、全国の大学改革に取り組まれた方です。
先生とは1974年2月「新しい文明を語る会」発足当初からのお付き合いです。丸の内界隈
の財界人と学者との毎月の会合を見事な司会により進めて下さいました。近年、原発、憲法、
沖縄、近隣諸国との国際関係など国論を二分する議論が沸騰していますが、これを止揚して
合意を形成する叡智と手法を井関先生はお持ちです。その根底には、直観、理性と感性の
融合が見られます。小生は、毎日1億円以上もの経費を使う割には、きわめて生産性の低い
国会審議のTV中継を延々と許している国会議員も、井関塾に弟子入りし、知識を収斂する
方法論を学んで恥をしのいではどうかと思っています。

 今日の発題者である野田一夫先生をご紹介します。
一言にして言えば、野田先生は“アイデア一つで生きて来られた方”です。先生の半生を
紐解くと、アイデア(ビジョン)が如何に大切か、大きな力かが立証されています。
野田先生は、小生が元立教大学総長松下正寿先生の鞄持ちをしていた頃からのお知り
合いです。野田先生は日本で初めて観光学科を創られた方であり、今や観光学科は
立教大学の看板の1つです。アイデア一つで、ニューオータニの土地にザ・フォーラムと
いう8階建てのビルを建て、紀尾井町クラブを創設されました。近くのビルで学術活動を
していた小生も大いに活用させていただきました。また、先生は多摩情報大学、宮城大学
を始め5つの大学を創られた方でもあります。先日久しぶりにお会いした折にも、「大脇君、
もう大学の時代じゃないよ!日本の未来のためには、世界のどこの大学にでも留学できる
ような国際高校を創ることだ!」だとお聞きし、目から鱗でした。
 先生はいつも人より一歩先、世界のトレンドを熟知されており、本質的で辛辣な提言を
されます。 月刊『世界』の2月号には「理念なきオリンピック」が特集されています。この
言葉は昨年から野田一夫先生が吐露されている言葉でもあります。ご案内の趣旨文にも
書きましたように、2020年のオリンピック、物の豊かさのゆえに国民は気概を失って
います。東北の復興においてしかりです。
 今日は野田先生(88歳)に活を入れていただき、皆様のアイデアを引き出し、「オリン
ピックを日本再生のチャンスとするにはどうしたらよいか?」皆様の忌憚のないご意見を
お伺いし、具体的シナリオを描く契機となれば幸いです。

 以上ご紹介させて頂きましたように、小生がご縁を頂いている諸先生、また今日ご来場
いただけなかった皆様を含め、ご来場の皆様に今日の会合をもつことができましたことを
改めて感謝申し上げます。「お蔭様で」ということばは、殺伐とした現代社会にぬくもり
と潤いを与える美しい日本語です。「もったいない」(ワンガリ・マータイ)は、病める
地球を癒すキーワードとして世界でも注目を集めました。「有難う」と言う言葉にも深み
があります。近代化によって失われつつあるかに見える美しい伝統統文化が、幸いにも東
アジア3国には残っています。
 今日ご出席の抱社長は、2020年のオリンピックには、会場の近くに舞台小屋を借りてで
も借りて、オリンピックの期間中、中国、韓国の演劇仲間も誘って共同公演したいと行動
されています。止めても止まらない溢れるボランティア精神、これこそが、何千億円の予
算を云々することよりもっと大切なことではないでしょうか!進退錐谷のならいない十字
路線上に立った現代文明を東洋の心をもって「おもてなし」し、新しい人類文明を解産の
契機とすること、これこそオリンピックの理念にふさわしいのではないかと考えています。
 今日の会合が自由自在・闊達な議論が交され、実り多い会合となるよう祈念し、開会の
ご挨拶とさせていただきます。

             地球市民機構 副理事長 
             NPO法人未来構想戦略フォーラム代表  大脇 準一郎 

     ☆ 2016.5.27 品川プリンスホテル講演動画31分⇒こちら

  2020年、東京オリンピックこそ、世界文明史に 日本文明が貢献できるラスト・チャンスである!

敬愛する諸兄姉・諸先輩の皆様、大脇です。
猛暑の続いたこの夏もようやく過ぎて、秋風を感じるこの頃ですが、皆様お変わ
りございませんでしょうか?

 小生が知的ボランティア活動を続けて10余年、未来構想のシンクタンクから、
市民国連、地球市民のグローバルな市民運動、そして最近では、社会貢献型のボ
ランティア・ビジネスへ移行していることは、10年間の総括で昨年報告した通り
です。「日本の未来構想(下)」

 本年は、近隣諸国との間に如何に平和の橋を架けるか、原発、憲法、増税問題
で揺れる国内において、国民的コンセンサスを如何に構築するかに腐心していま
す。

 テーマが大きいだけに、浮かんだアイディアを論文化するには、エネルギーが
足りず、身近かな後輩には気軽に発信していますが、1千を超す碩学の多い
e-miraiのグループへの発信は、敷居が高く、つい身構えして、先送りとなり、
結果として、皆様へはご無沙汰がちなっております。今日も纏まった形での発信
ではありませんが、「皆様とともに日本の未来構想を考えたい」と蛮勇をふるっ
て投稿いたします。箇条書き、乱筆、乱文であることをお許しください。皆様
の叡智を引き出す呼び水となれば、光栄これに優ることはありません。



 昨日9月8日、5時20分過ぎ、2020年のオリンピックが東京で開催され
ることが決定しました。日本人は感極まって抱き合う人、喜びで涙で言葉を詰
まらせる人、最近で、これほど国民が1つになった例を見たことがありません。

 このオリンピック東京開催は、単に経済の復興、スポーツの振興、環境整備に
留まることなく、東北震災復興に弾みをつけるであろうことが既に報道されてい
る通りです。小生はここに人類史上始めて、日本が世界文明史に貢献できる最大
最後のチャンスが来たと痛感し、筆をとっている次第です。

 隣国や与・野党の不毛の渦中にあって、私達は、視点を未来に置き、イデオロ
ギー・党派、利害、国境を越えてコンセンサス作りに努めてまいりました。その
都度のフォーラムに寄せられた叡智は、毎回、ブロードバンド、DVD,また文章
として蓄積して参りました。「塵も積もれば山となる」ように、この10数年に蓄積
した内容は、日本の歴史的知的遺産として残るほどのものとなりつつあり、
感慨深いものがあります。「未来構想フォーラムついて」

 お互に相手を非難・攻撃しても得るものは何もなく、戦後の荒廃した焼土が残る
のみです。身近な例では、東北震災に各国から義捐金です。当初、韓国からは400
億円と報道されてていましたが、日韓関係に関するマスコミの過剰な報道の悪影
響で、6億円でした。同じ隣国の台湾からは、200億円を超す義年金であった
ことは、如何に国民感情が社会に影響を及ぼすかの良き事例と言えましょう。

「意見のことなる両者の間にコンセンサス形成は可能か?」この手法については、
ディベード、KJ法、PD法等の方法論、M. サンデル教授や井関利明氏らの名司
会者にお世話になって来ました。最近の例をお知らせしたい。

 アジア平和貢献センターの西原春夫氏は、早稲田の総長と慶應の塾長の例を挙
げ述べている。「早慶というのは永久のライバルです。競い合って互いに発展を
続けるというのは、大変良いことですが、早稲田の総長と慶應の塾長が喧嘩し出
して、周りが迷惑したときどうするか。共通分母をつくる。しかも、慶應、早稲田の
本質を失わないでつくる。それは何か。“私学”です。仮想敵をつくる。たとえば
国立大学という敵をつくって、私学とし一致団結してそれにあたる。ところが今度は、
国立大学と私学が対立して困るということになったらどうするか。
日本の“大学”という共通分母さえ広げればよい。早稲田の総長、慶應の塾長、
東大の総長、京大の総長が一緒になって、仮想敵は文部省だと。もっと財政を大
きくしろと。・・・“勝敗超克”の思想と方法を日本は、はっきっりさせるべき
だと私は思います。」

 この方法は150年程前、坂本竜馬が使った方法である。犬猿の仲の薩長を倒幕
で結び、返す刀で、佐幕派をも巻き込み、大政奉還をさせ、歴史上稀に見る無血
革命を実現しました。このお蔭で日本は西欧の帝国主義勢力に呑まれること
なく、いち早く近代化を成し遂げることができました。

 小生は半生を東アジアの平和構築に捧げている某社長の依頼に答えて平和
構築のニューパラダイムを提案したことがある。時間がゆるせば、さらに敷衍して
公開したいと思っている。その3つの内の1つは、意見の対立する両者が、自説
を置いて、共存共栄共義の夢を描くことである。坂中英徳氏の「移民国家日本
の構想
」もその1つと言えよう。「靖国問題の普遍性を問う」
 夢は大きいほどほど良い。第69回未来構想フォーラム(創立7周年)にある詩人
が、中学生の詩「夢をください」を紹介してくれた。夢は希望、生きがい、生き
る力を源泉です。

 小生はオリンピックこそ、日本人を団結させ、アジアを1つにし、世界を一つ
にし、過去・現在・未来に渡る歴史的人類を一つにする“どでかい夢”、平和事
業だと痛感しています。

この日のために日本民族の歴史があったと後世の人々から評価されるかも知れま
せん。
 それは行きづまり来たった西欧近代文明を東洋の新しい視点から救済し、共に
生きて行こうする共生・共栄・共義の“和”(Great Harmony )の新文明時代の
黎明を告げる大事業であるからです。 日本の堅実なマネージメント能力が評価
されて、日本はかろうじてオリンピック誘致合戦に勝利しました。しかし、イスタン
ブールの“東西の架け橋”というコンセプトは日本よりも高く評価されました。

小生は東京オリンピックを単なる国威発揚に終わらせべきではないと思います。
他国の長所にも学び、東京オリンピックの理念が、万民の心に共感と感動を
呼ぶような高邁な、普遍性のあるものであることを祈念しています。安倍首相も
「長年の縮み思考から脱却して、元気村日本を!」と政府も後押しするとおっ
しゃっていました。猪瀬知事がおっしゃる「Discover Japan, 新しい未来をお
見せ」くださることを期待しています。

 日本国憲法は平和を謳っています。今までの「戦争はしません、戦力は持ちま
せん、核兵器は持ちません、もちこません」との「消極的平和国家理念」から
「積極的平和貢献理念」にむけて総力をあげてやるべきときだ」との西原総長の
ご意見に全面的に賛成です。小生も日本の起死回生策の1つとして「国際ボラン
ティア政策を国策に」
と提言して来ました。「日本の教育界の危機と未来構想」

 生涯、歴史を文明史という視点から研究したA.トインビーの発言は我々に貴重な
示唆をしてくれている。

 歴史上、21から26の文明圏が認められる。文明は宗教を中心として発達した。
高等宗教は低俗宗教を吸収し、4大文明圏に、今や1つの文明圏に糾合され
つつあるように見える。ここでいう高等・低俗宗教とは、価値観の普遍性を言っ
ている。現代は高等宗教が形骸化し、3つの低俗宗教(英雄崇拝:復古主義、現
実崇拝:科学信仰、未来崇拝:社会共産主義)が蔓延し、過去、現在、未来への
逃避に終わっている。現代の挑戦に対する最も望ましい応戦は、第4の型の{変
貌:自己変革}であるとも言っている。またトインビーは、国連が失敗するであ
ろうことを予言している。「それは、国連そのものは、世界のそれぞれの国の人民
とは直接つながっておらず、各国政府を通じてつながっている。人民に直接つな
がる世界機構が必要だからである」と指摘している。

 オリンピックは、人間賛歌、国家の素晴らしさを誇り、讃えるばかりで終わっては
ならない。2020年、東京オリンピックは成功如何は、我々日本人が世界の平和の
ために何が成せるか、一丸となって、世界からのゲストを接待し、見事な運営を
成した後、世界の人々の心に中に感謝と感動の土壌が造成され、日本人の世界に
誇る文化的伝統、 “和の心”、平和の種がしっかりと根ざすことでなはかろうか。

 東京オリンピックが、日本的奥ゆかしさのあふれた、人類の悲願であった恒久
平和の実現のエポック・メーキングな平和事業になることを期待してやまない。

    2013年9月9日 記  
                        大脇 準一郎 拝