60回未来構想フォーラム 2007年4月26
         吉祥寺南町コミュニティーセンター

      

      伊勢桃代 元国連本部研修部長 Ms. Momoyo Ise

      
(The former Director of U.N. Training Center & U.N University)

      
 The 60th Miraikoso Forum 「Training of International Leaders
        and Revitalization of the World 」4/26/'07
Kichijoji Community Center    

        

      国際的リーダーの育成(講演・要旨)

   1、まず、日本から世界ではなく、世界から日本の役割問う発想の大転換が重要

   2、“平和構築”は第一歩であって、本当に国民が安心して暮らせるかということが
      究極的目的。人々が欲しているのは精神性の問題。“この人だったら正義を護ってく
     れる”という精神性を前に出して信頼の回復をしていくこと、個々の宗教にこだわる
     のではなくて、
宗教とか文明を理解する場が大事

   3、日本人がリーダーシップを取れない理由の一つは,コミュニケーションの問題。    
     小学校から議論をさせていない。自分の意見も言わないから、自分の意見が間違って
     いることすら判らない。いろんな意見の中で生きるすべを持たないので,
一人勝手
     内向き,
自分たちの間でもあまりものを言わない,こういう考え方では国際社会に
     飛び立っていけるような人材は育たず,ましてやリーダーシップは取れない。

     国連ではいろんな意見がある、その上で自分はこれが正しいのだということが言えない
     と通用しない。日
本の内向きな考え方を直さないと国際社会には通用しい。
     日本に議長をやってもらうケースは非常に少ない。議長になるということは、いろんな
     人の意見を聴く必要がある。英語は習わなくていいという。これはとんでもない。
     
英語を知らないと通用しないというのが現実。

 4、国連内部においては職員をどう管理するか。
    国連ということは一匹狼。日本のお役所のようにみんなが支えて上に行くというのは無く,個人。
   そこでは民主的な,時には強制的な内部管理をするかという能力を若い人につけていかなければ
   ならない。国連は国際公務員であり,どちらかに偏っては,和平交渉はできない。あくまでも
   中立でなければならない。

   5、アジアの強みは、大陸とつながっていること。日本は島国。日本は城を明け渡して死ぬと
    か,妥協をしない文化。ヨーロッパの中で生き抜いてきた人々の中には激烈なものがある。
    日本人は本当に和平交渉をできるのかということを自覚しなければならない。

   6、国連で日本はリーダーシップを執っているのか”という事務総長の次のレベルになるよう
    な上級職に対して、日本人の数が非常に減った。国連の上級職をもっと日本人が採るべき。
    それには
最高の人材を持ってこなければならない。必ずしも外交官,国家公務員に限らないで,
    広く能力がある人を入れるべき。
国連の現状として残念ながら,政化してしまった。
    
「最高の人間を国連が獲得できる」という国連憲章に戻るべきではないか。

   7、若い人が外に出られない。国家戦略ということを立ち上げる時に来ている。
    官民一緒に考えないと、日本はどんどん遅れる。

   8、国連大学について
     教授、学生がいなくて,学位がでない。冷戦構造の中で,ネット革命の前にできた。
     考え方を変え、新しい解釈を加える、そういうグループを作ってはどうか?研究所ではなく、
     もっと実践的、実地的に力を入れ、コミュニティーが使えるものを作ってほしい。
     国連大学を日本に持ってきた理由は、日本の学界は学閥があって、縦割り,
これを開放的な
     横のつながりにして、優秀な方たちがもっと外に出るように
ということがあったが、
     実現されていない。
21世紀に役に立つ大学,市民団体,NGOに役に立つ大学であって欲しい。
     国連大学は、夏期講座とか、学生たちを入れてセミナーをやっているが、もっと地方に出て
     行ってやることも大事ではないか?国連大学憲章をもう一度検証することが大事。

   9、従軍慰安婦問題;これはあったことだ、だから謝罪するというのが、日本の国として大事。
     北朝鮮の問題で、アジアというのが目に入っていない。すべて日本中心。
     だから日本を一歩出るとゆがんでいる。アジアの中で、平和裡に生き延びるというのが
     難しくなる。

  10.日本への期待:世界は日本に何を期待しているかというと,思いやりとか,
     よく働く
ということ。法律は人間が作ったもの,どこか抜け道がある。倫理観が
     大変な問題。信頼よりも法律に頼った社会というのが、いかに問題があるかという
     のを,政治家はきちんと判って欲しい。
責任を取れる社会を創らなければならない。
     日本としての考え方が作られていない。
21世紀日本の倫理観を作らないと、
     若い人が目的を無くなってしまう。

11お互いのことを考えなければならない社会。人権は基本、人権のない社会はでき
   ない。人権をどう子供達に教えるかというのは,文科省の責任。
本のリーダーは
   余りにも近代国家の形成に必要なことの勉強をしていない
日本は日本独特の
   ものを考えていない
これは知識階級の大変な問題。国際的にリーダーを作る前に,
   国内的にしっかりしたリーダーを作っていかなければならない。
   市民が立ち上がるとき。
 


          講演メモ

 大脇:
 伊勢先生は国連の仕事を終えて、従軍慰安婦問題の処理に当たれ、民間の力も借りながら、
 昨年までご苦労されてきました。今日は三つのことをお話いただこうと思っています。
 1つは国連でのご経験を踏まえて国際人育成日本について、日本はたくさんの人数を国連
 機関に送れるはずなのに、びっくりする程少ない。日本は東大に入ったことが評価の基準
 となって、受験産業が反映絵居ています。しかし、東大を出たところで国際的に通じるのか、
 人材という面から、第
2に伊勢先生が担当された国連大学の将来展望について、第3に従軍
 慰安婦問題を担当されたご経験を通じて、日本のアジア外交についてお話いただきたい。
 ところで、今日は久しぶりに武藤信夫先生がお顔をみせてくださっています。先ほど
 お話いただいた鈴木博雄先生は筑波大学構想の中核的人物として東大を超えた国際
A
 大学をつくるというロマンに燃えたお方ですが、武藤先生は、長岡の国際大学創設に
 ご尽力なさった方です。今日のテーマの「国際人育成」ということと関連して、
 10分程度始めにお話をいただきたい。
 武藤信夫:
 福田信之先生が国立の筑波大学を創りを始めたときに、私は民間の国際大学作りをやるという
 ことでした。当時、国際大学という名前を作るということは、財界は恐怖感を持っていました。
 国連大学もできることになって、当時、問題になりますのは、財界は「理想的な国際関係という
 よりは、英語ができて経営ができる人が良いんだ」ということで、財界首脳と
10年間の大戦争を
 やりました。私は家を担保に入れたりしながら「何としても日本を変えたい」と国際大学創設の
 夢を追って来ました。なんとか国際大学創設に漕ぎ着けましたが、今も目先役立つ人間しか金が
 出せないという実業界の風潮は変わっていません。その後ピータードラッガー先生と連絡がつき
 まして、オレゴンに日米共同の大学を作るという話になりました。私はドラッガー先生に「建学
 の思想は何だ」と聞かれ、「二宮尊徳先生の“報徳思想”であるといったら、「それは世界にも
 通じるから是非、論文を書きなさい」と言われ書きました。
 伊勢:
“国連で日本はリーダーシップを執っているのか”ということについてですが、「あまり日本は
 リーダーシップを執っていない」としか言えないのではないか。日本が経済的に潤っているときには、
 日本はお金を出すが口を出さないという時があった。今はお金も出せなくなった。むしろアジアで
 リーダーシップを持っている国が出てきた。
“日本人が国連で少ない”という意見には異論があります。日本の分担金に比例して、何人の職員
 を入れて良いと国連は決めている(4百人程度)。そういう意味では少ないが、常に日本は百人ぐら
 いの職員を持っていた。そういう国はアメリカぐらいであって、数としてはこれだけの人数を持っ
 ている国は少ない。
事務総長の次のレベルになるような上級職に対して、日本人の数が非常に減った。
 これは大変に問題になる。
 今、国連というのは変化の時であります。先ず、国家体制。加盟国192カ国が一票の投票権を持
 っています。国家体制というものが今、非常に問題になっている。というのは内戦ですとか、
 国家の体制を取れていない国が多い。義務を果たせない国が増えているということであります。
 国家体制と国連、国家が一票を投じている間に国民の意思というのが問われる。個人のアイデンティ
 ティーが国家を超えている場合がある。あるエジプト人が「自分のアイデンティティーが一つ目は
 アラブ、二つ目がイスラム、三つ目がエジプト」。そういう人が出てきた。しかし国家が無ければ、
 人間社会がどうなるかというのは非常に大きな問題でありますから、人権、労働、権利、いろん
 な面で普遍的な価値観
を持って国家(国家体制)を重要視しなければならないというのが国連の
 大事な役割です。
 昔は冷戦構造の中で国連は、NYに本部がありましたが、今は仕事場が現場に行っています。
 一般にフィールド・オペレーションと言いますが、地域社会、市民との連携が無ければ、仕事が
 できない。もう一つは戦争にしても国家間であったのですが、“人間一人ひとりが平和に暮らせる”
 というのが目的であって、マスコミでよく言われる“平和構築”は第一歩であって、本当に国民
 が安心して暮らせるか
ということが究極的目的なのです。
 国家が国民を保護するという義務を持つという関連性を強くしなければならない。いろんな機関と
 連携をとりながら国連は仕事をしなければならない。これができるかどうか、国連がこういう
 リーダーシップを取れるかどうかが問われているのです。
 私が職員のときにローマ法王が国連総会にお出になられた。大変な熱狂振り、すごい歓迎。
 こういう歓迎は事務総長が壇上にあってもない。人々が欲しているのは精神性の問題。
 「“この人だったら正義を護ってくれる”という精神性が大事だ」ということを私は非常に感
 じました。精神性というものを前に出して信頼の回復ということをしていくことが大事では
 ないかと思います。ここの宗教にこだわるのではなくて、宗教とか文明を理解する場が大事
 ではないかと思います。
 国連の現状として残念ながら、政治化してしまったと思います。政治化しているとしても
 最高の人間を国連が獲得できるという憲章に戻るべきではないか。どういう人が必要か
 というと、日本人がリーダーシップを取れない理由の一つはコミュニケーションの問題。
 英語だけではなく、小学校から議論をさせていない。国連について、習っているのは、暗記の
 ためという小学校。国際社会に飛び立っていけるような人材はとってもできないと感じました。
 議論をしていないというのは国連でもどこでも大変な問題。自分の意見も言わないから、自分の
 意見が間違っていることすら判らない。いろんな意見の中で生きるすべを持たないので、一人
 勝手
なのです。日本が内向き、自分たちの間でもあまりものを言わない、こういう考え方では
 リーダーシップは取れない。
「英語は習わなくていい石原知事が一回おっしゃったの、びっくり
 しました。これはとんでもない。英語を知らないと通用しないというのが現実。沖縄に行きます
 と米軍があるから、英語がアメリカとつながっているような雰囲気がある。これは日本全体にも
 言えて、英語をしゃべるとアメリカに迎合していると見られる傾向があるが、英語は世界語なのです。
 言語は高度な文明の上に立っているものであって、若者に言うのは「丁寧な言葉を使え」と言って
 います。丁寧な言葉でなければ、交渉はできないのです。コミュニケーションの問題がぞんざいに
 なると、ひとり勝手になる。国連ではいろんな意見がある、その上で自分はこれが正しいのだと
 いうことが言えないと通用しない。日本の内向きな考え方を直さないと国際社会には通用しない。
 北朝鮮の問題で、アジアというのが目に入っていないすべて日本中心。だから日本を一歩
 出ると歪んでいるのです。日本はもっとアジアに対して目を向けないと、アジアの中で、平和裡に
 生き延びるというのが難しくなる。日本に議長をやってもらうケースは非常に少ない。
 議長になるということはいろんな人の意見を聴く必要がある。
 国連内部においては職員をどう管理するか。国連ということは一匹狼。日本のお役所の
 ようにみんなが支えて上に行くというのは無く、個人です。そこではどうやって民主的な、
 時には強制的な内部管理をするかという能力を若い人につけていかなければならない。
 国連は国際公務員であります。ということはどちらかに偏っては、和平交渉はできないの
 です。明石さんが苦労なされた。あくまでも中立でなければならない。若い人にすごく
 強調しているのですが、「ユーモアが無ければ国連の中では生きられないのですよ」と
 言っています。日本人は何かがあればすごく暗くなる。その点でモデルになるのが緒方貞子さん。
 あの方は明るく、めげない。
国連の上級職を日本人が採るべきだと思います。それには最高の人材を持ってこなけれ
ばならない。
まず、能力があっても英語ができない人が多い。それから日本と往々にして、
日本の仕事の仕方と国連の仕事の仕方が逆だったのです。例えば日本から局長につく。
そうすると、まったく動かなくなった。国連は上から命令を出さないと何も動かない。
この人は下から上がってくることを待っていた。そういうのに適した方をきちんとつける必要が
ある。私はこれからの国連というのは、必ずしも外交官、国家公務員に限らないで、もっと
広く能力がある人を入れるべき
と思います。やはり何とか人材をつけることなのですが、
あまりにも給料に差がありすぎた。企業の方は国連に来ると給料が二分の一ぐらいになる。
私はそういうことを乗り越えて、給料の差で最高の人を出せないというのはおかしいと思います。
一つ、こういう、未来構想フォーラムの場ですからですから、未来にどういうことをやるか
考えなければならないのですが、国家戦略を考えなければならないと思います。経団連の方
にも国連に来ていただいて、「休業扱いにするということを考えてほしい」と言ったのですが、
なかなかそういうことにならない。若い人が外に出られない国家戦略ということを立ち
上げる時
に来ているのではないかと思います。こういう段階で官民一緒に考えないと、日本は
どんどん遅れます。
アジアの国々で英語能力がどんどん上がっています。アジアの強みというのは、やはり
大陸とつながっている。日本は島国。日本は妥協をしない文化。たとえば城を明け渡して死ぬ
とか。妥協するというのを迎合していやなことと思う人もいると思うのですが、ヨーロッパの
中で生き抜いてきた人の中には激烈なものがあります。そういう日本人が本当に和平交渉を
できるのかということを自覚しなければならないと思います。
ウタント事務総長、アジアから最初の事務総長ですが、平和大学を作ろうと呼びかけ
られました。特に欧米なのですが、オックスフォード、ハーバード、ケンブリッジから
反対が出ました。ユネスコも入って、これをどうするかということで、どう学位をとるのか
ということで問題が出ました。
それで学位が無い大学を作ろうということになった。結局大学ということになったのですが、
これが悲劇の原因になった。大学という言葉ほど、世界中に同じイメージが定着している
言葉は無いのではないか。国連大学は教授がいなくて学生がいなくて、学位がでない。
国連大学というものですから、文部省と外務省にはさまれて非常に苦労した。
これは1974年、総会で決議された大学。東京に設置するというのも総会で決議されました。

国連大学というものをつくって、もっと途上国の声を聞いて、橋渡しをしようじゃないか
という考え方もありました。研究機関、ネットワークを作って、最高の学術的な研究をやる。
例えばヘルシンキに経済研究所を作って、どうやって発展途上国の経済状態を良くするかと
いうことでいろんな意見書も出しておられます。いまの国連大学を、これからどうするかと
いうことなのですけども、あれはやはり冷戦構造の中でできた、それからネット革命の前に
できた。ですから解釈・考え方を変える。新しい解釈を加える、そういうグループを作っても
良いと思う。これは研究所ではない、これをもっと実践的に実地的にできるかということ、
これに力を入れて欲しい。東大の出版会は力がありましたから、今、再生紙でも良いから、
こういうグループが、コミュニティーが使えるものを作ってほしい。
国連大学を日本に持ってきた理由ですが、日本の学界は学閥があって、系統立てている。
れを開放的な横のつながりにして、優秀な方たちがもっと外に出るようにということが
あったのですが、これがやられていない。影響を与えるということがそもそも無理だったのかも
知れません。
21世紀に役に立つ大学であって欲しい。市民団体NGOに役に立つ大学であって
欲しい。国連は新しい意見を出すことが必要であって、私の友達は日本に帰ってくると、
「○○論」ということが多いと言います。もっと実地研究というのが大事ではないでしょうか。
但し今、国連大学は、夏期講座とか、学生たちを入れてセミナーをやっています。もっとこう
いうことを地方に出て行って、やることが大事ではないでしょうか。国連大学憲章というもの
をもう一度検証
することが大事と思います。
従軍慰安婦の問題。アジア女性基金ができて、1997年から専務理事・事務局長をやらせて
いただき、大変に勉強になりました。日本というものを知る意味では良い経験だったなと思います。
1990年に韓国の慰安婦の方が名乗り出られて、大問題になったのです。まず日本政府は
何回も調査をやっております。この調査結果は河野洋平官房長官談話、村山談話が出て、
率直に謝罪をするというものなのですが、これは安倍総理がはっきりと継承するとおっし
ゃっている。ですから村山談話はアジアとの関係では非常に大事であります。立法化する
といわれましたが、結局立法化できなかった。
一人当たり
200万円の保障、医療保障で300万円、計500万円、総理大臣の謝罪の手紙がつきます。
これを名乗り出た人に出します。これを右からも左からもまやかし物と叩かれた。これを韓国・
フィリピン・オランダでやったのです。オランダでは一番胸を打ったのは総理大臣の謝罪の言葉、
フィリピンでは手紙を額に飾っている人がいる。女性の性と戦争というのは、戦争のたびに言われ
ることであって、旧ユーゴスラビアでも強制妊娠ということがやられてきたわけです。慰安婦は
昔の公娼制度の中で、日本の軍人にサービスをさせられた。慰安婦の方は、どんな方にしても
一生慰安婦という烙印が押される。結婚してもそれは隠していかなければならない、辛い、
人間の一生をだめにした方、結婚できなかった方のほうが多い。「どんな場にあっても人権を
侵してはならない」ということを子供達に叩き込まなければならない。ということを実感しました。
今、アメリカで立法が騒がれ、議員のホンダさんが中心になって立法化を言っておられますが、
アジア女性基金の手紙は歴代総理がサインをしている。しかし日本のリーダーがいろんなことを
言うから、「日本は政府として何を考えているのかをきちんとして欲しい」と言われる。実際、
ひどい発言が続く。これはあったことだ、だから謝罪するというのが、日本の国として大事
なことだと思います。
私は日本から長い間、離れていたのです。28年国連にいました。日本とはこういう国だと
思って期待していたのですね。日本は世界にまれな国なのです。これだけ国民が教育を受け、
税金を払い、平和に暮らしているというのは、世界にまれな国なのです。それがどうしてどん
どんひどくなるのか。品格のある国とか、美しい国という言葉は使いたくないのです。
しかしこういう素晴らしい国というのは続けていくべき。世界は日本に何を期待している
かというと、思いやりとか、よく働くということ。これは国連でも日本人職員に対して
言われている。
この前、韓国の高校生と電車に乗ったら、お年寄りのシートに私が乗った。そうしたら誰か
がシルバーシートと気づいて立ち上がった。電車は空いていた。座れば良いと言ったら、
「韓国ではこういうことは許されない」と言う。私の父は銀行員だったのですが、これが今、
揺らいできたのではないか。社会が信頼を失ったというときが、大変な問題。私はミステリー
が好きですが、くだらない政治家がたくさん出てくるが、立派な政治家が一人も出てこない。
こんなイメージで、社会の道徳観というのは、ものすごく大事なことで、「この議員はこういう
粉飾事件をやり偽の報告をやりましたが、法律に触れていない」ここは私は許されないと思う
のです。法律は人間が作ったものですから、どこか抜け道はあるのです。こういうことを
政府高官が平気で言う。法律の使い方ですが、信頼よりも法律に頼った社会というのが、
いかに問題があるかというのを、政治家の方はきちんと判って欲しいと思います。
倫理観というのが大変な問題と思います。
いろんなところで保身と責任回避が行き渡っている。これは大変なことで、例えば
問題が出てきたとすると、会議の途中で外に出て行く人がある。なんだろうと思うと、
ファイルを持って来ている。そこには「○月○日に私はこう言っているから、この問題には
関係ない」と言う。私は「そういう話をしている場所ではない」と言った。今はすごい
言い訳。これも私やっぱり考えなければならないこと。やはり責任を取れる社会を
創らなければならない。
日本に帰ってきて思いますのは、戦後60年間の空白というのは、近代国家を創るとすれば、
それに対応した考え方を作らなければならない。冷戦構造では毛沢東とかスターリンとかの
考え方で、どうも日本としての考え方が作られていないのではないか。
21世紀日本の
倫理観を作らないと、若い人が目的を無くなってしまう。
文部科学大臣が、「何か人権、人権と言いすぎるとメタボリック症候群になる」と言われた。
これは大問題と思う。お互いのことを考えなければならない社会であると思う。人権は
基本ですから、人権のない社会はできないわけですから。人権宣言ということをやっていますし。
人権をどう子供達に教えるかというのは、文科省の責任です。日本のリーダーがいかに近代
国家の形成に必要なことの勉強をしていないとしか思えないのです。
梅原猛先生がおっしゃっているのは、西洋はルソーなどが築き上げてきたもの。日本は
日本独特のものを考えていない
。これは知識階級の大変な問題と思います。ですからこれ
からは本当に国際的にリーダーを作る前に、国内的にしっかりしたリーダーを作って
いかなければならない。
今のようにいい加減な選挙をやっている状態では、選挙に行き
なさいといっても、誰に投票してよいのかわからないような状態ではならないと思います。
私は市民が立ち上がるときだと思います。市民運動を活発にし、声を上げるときだと思います。
大脇
伊勢先生は、1)どういう動機で国連に入って活動されるようになったのですか?
2)国益を超えた国連の中に上院のような有識者会議を創ったらどうかという意見、
地域代表を選んで国連をやる、世界連邦運動も含めて国連改革の展望について、
3)国連職員を養成する大学もあってもよいと思うのですが。なぜウタントの言った
「平和」という言葉が無くなり、国連大学になったのか。後に、コスタリカに国連平和
大学が作られましたが、国連大学の将来についてもう少しお聞きしたい。

海野: 

英語教育の話があり、私も賛成ですが、この問題は国語教育の時間数と関連してまして、
石原慎太郎の本意は、国語教育もきちんとできていないということを彼一流の皮肉で言った
のです。時間数の問題。もう少し英語教育に歌を利用すると良いと思いますね。人権と
自己中心性というのが同じになっている。その辺をもう少しちゃんとしなければならない。
大脇アジアのリーダー、北東アジアのリーダーになるには、日本人はあまりにも歴史を
   知らない。日本の国家指導者の方々が日本の歴史に無知である。謙虚に近代史とは
   なんだったのか、反省すべきは反省して未来社会を一緒につくろうじゃないかという
   呼びかけるべきではないでしょうか。未来の子供達に受け継がれるべき伝統がなく
   なっている。
伊勢先生が、日本人、女性として28年も国連で働かれた。国際人の先駆者だと尊敬し
  ます。帰国さてれ実感される日本という母国が、期待に反するもの、憂国の至情禁じ
  がたいとおっしゃられたこと、感動いたしました。1)私の子供のころの国連と、
  今の国連は様変わりしていますが、湯川秀樹博士や世界の有識者達が世界連邦を提唱
  したと思うが、今の国連ではどう評価されているのか2)
M.R.A(道徳再武装運動)は、
  どのように国連では考えておられるのか。私が学生時代はエスペラント語が国際言語
  になるのだと言われていたが、今はどう言われないのか。3)最後に分断国家の一方
  である韓国から
潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が誕生したのですが、アジア
  でなぜ日本の強いリーダーの登場がないのか?伊勢先生のような方の名前が上らないのは、
  分担金だけ出せば良いわけではないと思うのです。すなわち、平和のリーダーとしての
  日本の役割、被爆国としての日本が積極的平和貢献国家としてのイメージを世界の人々
  に与えて行かないからだと思います。
伊勢英語と国語の問題で、実際に日本企業で英語でセールスをやろうとしたらできず、
   調査したら日本語が出来ていなかったとも聞きます。私が言いたいのは相関関係です。
   日本を大事にしないということが英語を学べないということと関連しているのではないか
   と思う。毎年北京とモスクワに行って、通訳を見ると、みなさん本当に日本に一年いる
   だけで日本語をやれる。それからお相撲さんでも素晴らしい日本語を使う。本当に新しい
   ことを考えないと、アセアンの会合を見てみても英語ができないのは日本の総理だけなの
   です。
  エスペラント語ですけれども、今、実際に地域化。ユーロとか。アジアではアセアン共同体。
  北東アジア共同体も話題になっている。地域化の方向が次の段階ではないかなという感じが
  しています。今は英語の時代になってしまったという感じはしています。
  どうして国連に言ったかという質問ですが、私は小さいときから社会問題については
  ものすごい興味がありました。有賀キザエモン先生に教わって、留学していまして、
  ケネディ大統領からジョンソン大統領に移ったときでしたが、人権、道徳問題だとはっきり
  とおっしゃっておられるし、そこからいろんな人権運動が起きたわけです。その一つが
  反貧困政策。そこで私は雇われまして、
NY市に行きました。あれは一つの市民運動なので
  すね。市民に直接お金を渡していた。そう使われたか報告するのが私の役割でして、
  国連に入ってからは経済社会開発を専門にやっていました。
  国連改革の話なんですが、安保理何ですが、私は安保理のメンバーにならなくても
  よいじゃないかという立場です。外務省には許せないのでしょうけど。安保理に対して
  ももっと議論があって当然と思います。安保理のメンバーは核を作り、武器を輸出して
  います。そこに日本が入ってどうするのですか。日本はもっと核を持っていない国と
  一緒にやったほうがよいのではないですか。
安保理に入ると格が上がるわけですね。
  それならば問題と思う。国連改革というと人事改革。最高の連中が集まるという
  のにはどうするか。知的なものを蓄えなければならない。改革というのは根本的な
  改革を勧めなければならない。素晴らしいリーダーが来れば、もっとやるのです

  省と省をくっつけるというよりも、素晴らしい人たちを集めればできる。一人の素晴
  らしいリーダーができればできる。そういうリーダーを集めることだと思います。
  人権ということが言われますが、一人ひとりの権利は守っていかなければならない
  というのが近代のもとだと思う。そこが教育の目的
であると思う。

椎名

安保理国は第二次大戦の戦勝国家で、核をつくって武器を売っている。
韓国人が国連事務総長になったということですが、むしろ日本がアジア諸国に
完全に受け入れられていないので、むしろ良かったと思う。日本の警察が
総連に入っているが、よく日本が戦前何をしたとよく言われる。強制労働
百万とも二百万人とも言われている。日本のマスコミが報道しない。北朝鮮は
すでに核を持っていると思うが、窮鼠猫を噛むという。危険な関係、緊迫している。
日本に責任がある。謝るべきは謝らなければならない。ドイツは戦後あちこちで謝っている。
大脇北朝鮮はどうしてできた国かというと抗日パルチザン。朝鮮は日帝に併合されて
  しまったので、満州に逃れて抗日運動を続けた。外面的には、戦後建国した北朝鮮は、
  抗日パルチザンの流れを汲み、建国後も日本と国交を結んでいないので未だ戦争状態が
  続いている状況、 朝鮮(韓国)動乱も未だ一時的休戦状態、戦時中にあっての拉致
  監禁という視点が日本側には無い。また戦前の日本による朝鮮人強制連行の事実と
  共に併せて考えるべきであろう。
スターリンによって立てられた金日成は、歴史的
  金日成の仮面をかぶった偽者、金正柱であることは今や衆目の知る事実です。しかし、
  かつてのヒットラーばりに、おおきな嘘を力強く、くりかえしをつけばほんとのように
  錯覚させられているに過ぎない。未来志向で行くべきと思うが、拉致問題、歴史的欺瞞
  を乗り越えて、北朝鮮に核をあきらめさせるには、よほどの器量を持った、人物が出ない
  と難しいのではないか?

田中: 日本は核廃絶、世界連邦といえば、それを広めれば

大脇いかなる国際社会において責任を持つか。日本が困難な中にでも飛んでいって
  奉仕する人がどれだけいるのですか。国家の中で、自分の保身ばかり考えるから
  いろんな問題が起きるのです。日本から世界を見るのではなくて、世界から日本を
  見ること。安保理に全然なれないのは、日本のためになろうとするから。
武藤日本人があまりにも井の中の蛙。文科省の発言など恥ずかしい。GHQの中には、
  ホイットニーなんかが、本当に日本は真の平和国家に再建しようとした。それを
  ビラにして巻いた。日本経営倫理学界の水谷という人などが見ているが。
GHQ
  改革に当時関わった人が実は一人生きている。
GHQの中に日本の再軍備をすべき
  だという人もいた。二宮尊徳の推譲で行けば、極端な貧乏人もいなければ、極端な
  金持ちもいない。これは世界最高のことだ。これは
GHQの少佐が言っている。
            以下 略
閉会の辞:大脇
今日の会合が可能となったのは、福元暁子さん、高橋幹子さん、佐々木さんら
ボランティアも皆様のお蔭です。今回、武蔵野市の後援を得、東京女子大、
亜細亜大、成蹊大、早稲田大、首都東京大学を始め、近郊の大学、高校には
告示をいただきました。メールや
Faxではご案内いたしましたが、電話でご連絡
する暇もないくらいでした。
次回は525日午後3時と6時を予定しています。
皆様の積極的ご参加を期待しています。

                      (文責:堀江/大脇)


   ­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­­
フォーラム後の感想海野和三郎 東京大学名誉教授(天文学)東京自由大学理事長
鈴木先生、小池先生、伊勢先生のご発言に全面的に賛成です。しかし、言語表現は
とかく論理が正否、善悪などの2元的表現になる傾向があり、教育のような超多次元
問題では、少なくとも3つ以上の視点からの議論が必要になります。大脇先生の未来
構想では、それを哲学性として、表象性(存在論)、意味性(価値論)、科学性
(認識・論理)とし、第1に「世界から日本を」の視点の転換、第2に視点の転換
に伴う「価値観の確立」、第3に世界に通じる文明史観の樹立、となっており、
「未来」に視点を置いた教育構想が今回のテーマになっていました。一つの施策には、
長所と欠点が必ず伴いますので、多次元的考察が十分為されないと、改革は、一面の
改良になっても他面の劣化になるのが常です。ですから、教育論には一般論だけでなく、
処方箋を着けて欲しいのですが、一般的な処方箋作りは困難です。鈴木先生、伊勢先生
はその点お分かりのようでしたが、小池先生は自閉症に対する授乳の功徳(よい処方箋)
の話をされながら、逆に良書を書いた話を具体的内容(処方箋)に触れずにお話された
ので、多少、消化不良でした。
時間もないので、私自身の意見は述べませんでしたが、私の教育原理は、
(過去の歴史よりは)未来の人の目線でみること(または歴史上の人物が
未来を見る目線)、宇宙性(宇宙の霊性)を感得すること、混沌の現状から智慧
(創造性)を得ることで、本質的には大脇先生と同じですが、具体的には、
エネルギー問題、地球環境問題、人口問題の解決として、海の魔法と森の魔法と
で守られた水の惑星
,地球の不思議を子ども達に伝え、太陽エネルギーで石油火力
より安く電力をつくる「水星と海と森の太陽エネルギー工学」を発明する原理を
教え、各人が生きる力に自信を持つような教育を考えています。

       
伊勢 桃代 氏・ 経 歴

1
955‐59  慶応義塾大学 社会学専攻 社会学学士取得
1959‐62  シラキュース大学マックウェル大学院
         計量社会学専攻計量社会学修士号取得

1962-64  ハーバード大学にて比較文化研究に従事、社会学を学ぶ
1964-68  アメリカ政府予算によるケネディ・ジョンソン大統領の下での
     立法による反貧困政策に従事する。
    (ニューヨーク州シラキュース市のCrusade for Opportunity)
     反貧困政策をつくるための教育政策・消費者のための政策など各種研究

1968-69  ニューヨーク市政府の反貧困プログラムにて研究部長
1969-73  国際連合ニューヨーク本部に勤務
1974-76  国際連合ニューヨーク本部事務総長室にて国連大学設立事業に参画
1976-79  国連大学ニューヨーク連絡事務所所長
1978    コロンビア大学建築学部都市環境研究所にて都市計画修士号取得
1980-82  国際連合ニューヨーク本部人事局採用計画課長
1983-85  国際連合ニューヨーク本部人事局人事採用部部長補佐
1985-88  国際連合ニューヨーク本部研修部部長
1988-89  国連大学事務局長
1990-93  国際連合ニューヨーク本部人材管理部長、研修・試験制度等に従事
1993-97  国際連合ニューヨーク本部専門官部部長
      懲戒・労働問題・研修・採用試験制度・国際公務員制度・給料等の管理
1997    国際連合退職

1997-05 財団法人 女性のためのアジア平和国民基金 専務理事兼事務局長

その他役職
  ◇国際公務員制度連絡協議委員会副議長
  ◇国際機関全体の研修委員会委員長
  ◇国際セミナーにおける議長 北アイルランドにおいてのPKO研修フォーラム
  ◇国連に関する発行物

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Ms. Momoyo Ise Curriculum Vitae

Education : BA in Sociology, KeioUniversity, Tokyo, Japan
     
MA in Sociology, MaxwellGraduateSchool, SyracuseUniversity

      MA in Urban Planning, ColumbiaUniversity

Work Experience:
 
1963-1969 Anti-poverty program (US Federal project) at Syracuse and at the NY City Government
 1969-1997 United Nations: Department of Economic and Social Development

  Office of Human Resources Management: Director

  United Nations University: Executive Director,
 
Chairman, UN System-wide Sub-Committee on Training

 1997-2005 Asian Women’s Fund, TokyoJapan: Executive Director


Present affiliation:
   Member of the Board of UN Association of Japan
   
Vice Chairman, UN Okinawa Promotion Committee

Vice Chairman, Committee to Aid Promotion of Democracy and Peace (ADP)
  
Member of the Board to Support UN University
Publications:  
   
Number of publications on the International Civil Service

Award:
Foreign Minister’s Award